2009年
著者:齋藤忠夫
所属:東北大学大学院農学研究科

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

市販の牛乳タンパク質のプロテアーゼ加水分解物(WE80BG)から、ヒトAT1受容体阻害活性を持つ複数のペプチド成分を見出した。これらのペプチドは、ACE阻害活性は余り高くないが、降圧活性は示した。その中の一つをHPLCにより単離して化学構造を解明した。構造知見に基づき合成したテトラペプチド(ATPM)を用いて、AT1受容体阻害活性を測定した。Ang2が受容体に結合するのを50%阻害するときの合成ペプチドの結合性は、10-3M程度と高値では無かったが、確かにAT1受容体阻害活性が確認された。牛乳ペプチド成分の中に弱いながらもAT1受容体阻害活性が見出されたことの意義は大きく、この活性が本テトラペプチドの降圧活性に大きく寄与していることが考えられた。さらに本ペプチドから消化過程で酵素誘導されるトリおよびジペプチドにも、AT1受容体阻害活性を検討して、そのエピトープ部分を確定することは今後の課題である。生理活性ペプチドが複数の機能を有するという「多機能性ペプチド」の存在はまだ不明の点が多く、牛乳タンパク質の潜在的に有する食品タンパク質としての三次機能性の解明の一端を担ったと考えられた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001mnub.html

2015年9月18日