2006年
著者:葭 原 明 弘
所属:新潟大学大学院医歯学総合研究科

  • 健康科学
  • その他

要約

歯や歯周組織との関連が期待される食品に牛乳・乳製品がある。牛乳・乳製品にはタンパク質、脂質、乳糖、カルシウム、ビタミンA、B等が含まれており、健康維持に寄与する効果が示されている。口腔に対しても歯周組織の強化および歯質の再石灰化作用の促進が期待できる。本調査では牛乳乳製品摂取量と残存歯数をはじめとする歯科疾患の状況との関連および牛乳乳製品摂取量および咀嚼機能の維持が廃用症候群予防に及ぼす影響について検討することを目的としている。
新潟市内在住の70歳、600人について、口腔内および全身状態の調査を行った。調査はベースラインから1年に一回、計6年間実施した。栄養摂取状況については,半定量的食物摂取頻度調査法により評価し食品群別摂取量およびアルコール摂取量(g)を体重あたりの値に変換した。さらに、6年間で発症した根面う蝕歯数および歯周病発症歯数を対象者別に記録した。また、廃用状態に関連する項目として、開眼片足立ち、膝下伸展力、握力、身長、体重、家族数、教育年齢を調査した。さらに、採血を行い、血清中アルブミン濃度、IgG濃度、総コレステロール濃度を測定した。分析にあたっては、6基礎食品群摂取量と6年間の根面う蝕発症歯数、歯周病発症歯数との関連をステップワイズ重回帰分析を用いて評価した。
その結果、6年間の根面う蝕発症歯数と統計学的に有意な関連の認められた食品は牛乳・乳製品群(Coef.=-0.102, p=0.035)で、歯周病発症歯数と統計学的に有意な関連の認められた食品は緑黄色野菜群(Coef.=-0.591, p=0.002)、および穀物・いも・砂糖類(Coef.=-0.206, p=0.028)であった。さらに、喪失歯の増加数と統計学的に有意な関連の認められた食品は、緑黄色野菜群(Coef.=-0.196,p=0.012)、穀物・いも・砂糖類(Coef.=-0.081, p=0.039)であった。本調査より、高齢者における牛乳・乳製品摂取量は根面う蝕の発症と関連することが明らかになった。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001a8l5.html
キーワード:
高齢者根面う蝕の発症歯周病の発症喪失歯の増加

2015年9月18日