2004年
著者:江指隆年
所属:聖徳大学人文学部生活文化学科

  • 健康科学
  • その他

要約

【緒言】近年,我が国では欧米型疾患が主要死因を占め,とくに大腸がんは急激に増加している。大腸がんは食物摂取の摂取量や便秘とも関連し,便通を改善することは大腸がんの予防につながり,健康維持のために重要である。生活習慣や食生活は排便に影響を与え,食生活の変化による腸内細菌叢の違いも排便とも関連が深いと言われている。便秘は頭痛,肩こり,不眠,食欲不振などの原因になったり,肌が荒れたり,にきびや吹き出物が出やすくなるなど皮膚症状などを伴い,心身の不快症状など身体愁訴への影響も多く,便秘を解消することは女性の健康管理において重要である。
【目的】便秘を解消するための食事としては朝冷たい水分や牛乳を摂取することなどが胃・大腸反射を促して効果的であることが知られているが,牛乳摂取の便秘に対する寄与を定量的に記述した報告は多くはあまりなされていない。そこで今回我々は,牛乳摂取による便秘への影響を検討するために,若年女性を対象として介入実験を行った。
【方法】調査期間は2004年6月に某女子大学1年生223名を対象者とし,便秘に関するアンケート調査を行った。その結果に基づき,2004年9~12月に排便頻度によって3日に1回未満排便する者(便秘群)26名,3日に1回以上排便する者(非便秘群)25名を選択し,さらにそれぞれを前期4週間牛乳飲用する群と後期4週間牛乳飲用する群の計4群に分けて牛乳摂取による便秘に及ぼす影響について検討を行った。
【結果】①飲用前及び飲用中において便秘群,非便秘群ともに体重,BMI,体脂肪率に差は認められなかった。②排便頻度(1週間の排便回数の平均値),排便回数(1週間の排便のあった日数),排便量は,飲用前に比べて飲用中で多い傾向が認められた。③排便時期,便の症状,便の色,便のにおい,胃腸症状では牛乳付加による便秘の改善は認められなかった。
【結語】今回の実験では,便秘群において排便頻度・排便回数・排便量に牛乳飲用の効果が多少認められた。しかし便の性状における改善は認められなかった。
この原因は牛乳の摂取条件を限定しなかったことが一因であると考えられる。今回の実験では,牛乳の摂取条件はとくに考えず,普段の食生活での状況を第一に考えたが,一般に便秘解消のための食事指導では,朝冷たい牛乳を飲むことが進められており,今後摂取時間や摂取温度をきちんと管理して実験を行うことが必要である。
牛乳付加量については,飲みやすい量を考えて1回200mLとしたが,200mL程度の量では便秘の性状の改善までに至らなかったと考えられる。
とくに若い女性の場合には運動不足,痩せ志向によるダイエット,精神的ストレスが便秘に多大な影響を与え,かなり重度の便秘状態の者が多いと報告されており,今回の女子大生の食事分析の結果,エネルギー,カルシウム,鉄摂取量が少ない状況が認められ,ダイエット傾向が認められたことから,普段から腸の働きが乱れ,便秘状況が続いていたと推察され,排便回数,排便量には改善がみられたものの,便の性状の改善までには至らなかったものと推察される。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/8d863s000004dmbk.html
キーワード:
女子学生,牛乳,排便回数,排便性状

2015年9月18日