2002年
著者:広田孝子
所属:辻学園栄養専門学校中央研究室

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要旨

世界的な増加傾向にある肥満は、体脂肪が過剰に蓄積された状態であるため、体重が多くとも筋量が多い状態を意味しない。他方、若年女性の平均体重は年々減少傾向にあり、減量するために栄養価の高い食品を摂ることを避け、拒食症の増加傾向すらある。彼女達の目標となるのは単に体重を減少させることであり、体脂肪量の減少を目的としていない。また、体脂肪量を正確に測定することは技術的にも困難である。そこで今回、唯一体脂肪、筋量、骨量、骨密度をそれぞれ正確に測定できる2重エネルギーX線吸収法(DXA法)を用い、若年女性の体重に占める体脂肪の割合を調査し日常の食生活との関係を観察した。中でも、栄養価が高いため、若年女性には太る食品として敬遠される傾向の強い牛乳・乳製品の摂取を子どもの頃までさかのぼり調査した。
対象者は18-24歳の女子専門学校生で、身長、体重、体格指数(BMI:kg/m2)は、国民栄養調査成績の同年代の日本人平均値と同様の値を示した。しかし、牛乳・乳製品摂取量においては対象者が高値を示した。体重が平均未満にもかかわらず、体脂肪率が平均を超えた対象者は32%を占めた。また体重が平均未満の者の体脂肪率との相関因子は、小学校の給食を残す、子どもの頃から牛乳摂取習慣のなかった、中-高校生時に運動歴が少ない、インスタント食品の摂取量が多い、卵、果物摂取が少ない等であった。また、平均体重未満で、加えて牛乳・乳製品摂取カルシウム量が200mg/日未満の者は、以上の者より体脂肪率が有意に高く観察された。そこで、全対象者の牛乳・乳製品摂取カルシウム量の相関因子を観察すると骨量、骨密度、運動量の他、大豆、魚、肉、卵摂取、果物、海藻摂取と正の相関が、インスタント食品摂取、外食、欠食回数などとは負の相関が観察された。また、子どもの頃の牛乳摂取習慣のなかった者において、体脂肪率が有意に高かった。体重が平均以上の者では、牛乳・乳製品摂取量と体重、体脂肪との相関は見出されなかった。
以上のことより、子どもの頃からの牛乳摂取習慣を持ち、牛乳・乳製品を十分摂る食生活は、体重や体脂肪を増加させない。むしろ、低体重(平均体重未満)の者においては体脂肪率の低下、筋量や骨密度の増加に関わっている可能性が示唆された。


書籍ページURL
  https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021dl2.html

2015年9月18日