2001年
著者:広田孝子
所属:辻学園栄養専門学校中央研究室

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要旨

最近の若者や子供達の不適切な食生活またはこれらに起因する身体および精神的健康障害が各方面から指摘されている。若年スポーツ選手は日常の食生活を軽視する傾向があるにもかかわらず、競技力向上のために大量のサプリメントに依存することがよく観察される。そこで今回、日常の食生活の改善、例えば適切な栄養情報の提供と共に牛乳摂取習慣(500ml/日以上)を持つことにより、トレーニング後の疲労の減少効果や、筋肉量、骨量の増加が期待できるのではないか検討した。対象者は社会人アメリカンフットボール男性選手(26.9±3.2歳)38名で、シーズン開始からトレーニング期間の16週間にわたり毎日牛乳を500ml、さらに週3回のトレーニング直後に毎回500mlを加えて牛乳を摂取し、栄養指導を行った牛乳介入群とどちらも介入を行わない対照群とを比較観察した。比較は2重エネルギーX線吸収(DXA)法による身体部位別筋肉、脂肪、骨量及び骨密度の測定値、Mc NairらのPOMS(Profile of Mood State)や日本産業衛生学会の「自覚症状調べ」に基づく自覚疲労度の変動により観察した。
牛乳介入群では、体脂肪量の増加は観察されなかったものの骨蜜度(腰椎、大腿骨近位部)、骨量(体幹部)、筋量(体幹部)が有意に増加した。トレーニング後の自覚疲労も抑制された。また介入前に既に牛乳摂取習慣のあった者ほどこれらの影響はより大きく観察された。一方対照群では、シーズン中の体脂肪量の増加、筋量(脚)の減少が認められ、骨密度及び骨量、トレーニング後の疲労感の変化は観察されなかった。
以上のことから、若年スポーツ選手において適切な栄養指導の伴う1日500ml以上の牛乳摂取習慣はトレーニングによる、筋量や骨量の増加、加えて自覚疲労の抑制効果が期待でき、トレーニングによる運動競技力向上の効果がより大きく現れる可能性が示唆された。

書籍ページURL
  https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021dt1.html
キーワード:
骨密度体組成体脂肪量筋量

2015年9月18日