2001年
著者:米山京子
所属:奈良教育大学教育学部家政教育講座

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

1年間以上の長期授乳婦で、授乳期間中および断乳後に食事指導により乳・乳製品をできるだけ多く摂取した群(M群)と殆ど摂取しなかった群(N群)、および非授乳婦群(C群)の3群について、出産後より授乳期間中、断乳後の骨密度をそれぞれ6カ月開隔で縦断的に測定し、骨密度の回復およびそれと乳、乳製品摂取との関迷を3群間の比較および各群内の分析により検討した。骨密度測定は超音波骨密度測定装置(湿式)を用いた。得られた所見は、
1.断乳後の骨密度回復は、授乳による骨密度への影響の程度および出産回数によって異なった。
2.第1子出産では、N群では断乳時に骨密度は有意に低下したが、M群では有意な低下ではなかった。M群の第2、第3子では授乳期間中にも上昇した。乳・乳製品を摂取して授乳した場合、骨密度の低下を防ぎ得ることが判明した。
3.N群では授乳による低下が著しく、断乳の半年後にはリバウンド的に急上昇、ほぼ3年後までさらに上昇し開始時よりさらに高くなる場合も見られた。
4.N群の第2子、第3子出産では開始時より追跡期間中一貫して骨密度値がかなり低く、第1子授乳からの回復が遅れていることが示唆される。
5.断乳後には尿中のHP/creが低くなり、授乳中に亢進していた骨代謝が回復したことが示唆された。N群では授乳期間中Ca/creが有意に低く、腎でのCa保持が示唆された。断乳後には高値に回復した。
6.授乳期間中および断乳後の血清PTHに変化は認められなかった。
7.長期追跡の結果、回復期に乳、乳製品摂取量が多く、身体活動を積極約に行った者では、断乳後骨密度が開始時以上に高くなる場合が見られた。断乳後の骨密度回復期に栄養と運動により骨密度ポテンシャルを高め得ることが示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021dt1.html 
キーワード:
授乳断乳骨密度乳・乳製品摂取

2015年9月18日