2001年
著者:猿田享男
所属:慶應義塾大学医学部内科

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

経口Ca摂取による血圧低下作用は個体差が大きく、必ずしも十分な評価を受けていない。近年、高血圧症の治療に対する個々の反応性の違いを遺伝的多様性(遺伝子多型)に求める研究が盛んに行われるようになってきた。しかしながら、高血圧の成因として最重要であるCa代謝関連遺伝子の検討はほとんど行われていない。本研究はCa関連候補遺伝子の遺伝子多型と細胞内Ca動態との関連について解析することを目的する。
若年男性検診対象者350名から同意を得た上でDNAを抽出した。高血圧の遺伝歴の濃厚な高血圧群15名と高血圧の遺伝歴を有さない血圧低値群20名について、Epstein-Barrウィルスにより不死化リンパ芽球を作成し、細胞・遺伝子バンクを構築した。高血圧群は生体および細胞レベルでインスリン抵抗性を示した。さらに、一部の症例で細胞レベルでのインスリン抵抗性に加えて、細胞内カルシウム動態の異常が併存している可能性が示唆された。インスリン抵抗性関連遺伝子としてインスリン受容体遺伝子のNsiI多型を検討し、正常血圧者においては、従来の報告とは異なり、NsiIの切断部位を持たないもので空腹時インスリン値が高値を示す、すなわち、インスリン抵抗性であるという結果を得た。今回、遺伝子解析研究に対する倫理規定が厳しくなったことにより、検体収集に多くの時間を費やしたため、細胞内Ca動態の測定に関しては十分な解析結果を提示することができなかった。今後も引き続き、解析対象を増やし、不安化リンパ芽球における細胞内Ca関連およびCa関連候被遺伝子との間で関連研究をする予定である。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021dt1.html
キーワード:
経口Ca摂取遺伝子多型Ca関連候補遺伝子細胞内Ca動態

2015年9月18日