2000年
著者:久米川正好
所属:明海大学歯学部口腔解剖学第一講座

  • 健康科学
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はじめに

乳中のカルシウムが、カルシウム吸収の促進や骨粗鬆症の改善に効果があり、骨形成を高めることは数多く報告されている。しかし、乳中の成分中には、カルシウム以外にも骨代謝に関与する物質が存在することが明らかにされている。例えば、牛乳中の乳清画分には、骨芽細胞を増殖・分化させたり、破骨細胞の活性化を制御する成分が明らかになっている。
一方、授乳期の骨は、軟骨内骨化様式によって成長する。この骨の成長にも乳成分は深く関わっていることが考えられる。しかし、乳成分の骨成長への作用については、解明が進んでいない。授乳期における乳幼児の骨の成長は、主として軟骨内骨代謝様式によっておこる。これまでに、我々は、大阪大学の開先生らと共同研究で、軟骨基質から軟骨内骨化に関係している成分を分離してきた。その中で、angiogeninを大量に精製し、破骨細胞に対する効果を調べている。これまでの検討の結果から、angiogeninは、骨吸収を促進することがわかり、また内軟骨性骨化に重要な役割を果たす可能性が示唆された。そして、angiogeninと同様の血管新生因子である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が、骨の細胞、特に破骨細胞にどのような効果を示すかについて調べてangiogeninの作用と比べるとともに、血管新生因子と骨の成長がどのように関わるかについて調べることとした。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021e2i.html 

2015年9月18日