1999年
著者:杉山みち子
所属:国立健康・栄幾研究所

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はじめに

米国では、近年、大規模な褥瘡の予防ならびに治療に関する調査・研究が行われ、褥瘡発症に低アルブミン血症ならびに低体重などのたんぱく質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition,PEM)が関連し、その改善には、乳たんぱくを主体とした栄養食品の利用の有無などが大きく関連していることが明らかになってきている。一方、我が国においても、褥瘡治療、看護ケアの総合評価を行い、褥瘡予防の方途に関する調査研究が取り組まれ、申請者も協力研究者として参加している(1998厚生科学研究班長、大浦武彦)。この班研究によって、栄養以外の看護ケアならびに治療に関する基礎的事項に関しては調査成果が明らかにされつつある。しかし、現在のところ、栄養状態や食習慣、さらには栄養ケアとの関連は殆ど検討されていない。
さらに、高齢者の最大の栄養問題は、PEMである。申請者らは、我が国において、高齢者の栄養管理サーピスを構築するために、日本全国の高齢者施設を対象とした調査・研究を行ってきた(厚生省 老人保健事業推進等補助金研究、主任研究者 松田 朗)。その結果、高齢者施設において、血清アルブミン値が3.5g/dl以下でPEMの中等度リスク者と判定されるものは、約4割と高率で観察されることを明らかにした。また、本学術研究助成によるこれまでの申請者らの研究成果から、高齢者のPEMの改善に対する、乳を原料とする栄養食品の有効性は高く評価されている。
しかし、我が国では、褥瘡の予防ならびに治療へのPEMの影響ならびに、牛乳・乳製品の習慣的摂取との関連、さらには、乳を原料とした栄養食品の有効性などに関しては、殆ど研究されていない。
本調査・研究の目的は、高齢者の褥瘡予防、ならびに治療のための栄養管理サービスの一環として、牛乳・乳製品の効果的利用の必要性を明らかにし、その必要性を広く一般に普及することである。そこで、本研究においては、総合病院の脳外科病棟入院患者の牛乳・乳製品摂取状況を調査し、その摂取状況と栄養状態、さらに褥瘡との関連性について検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html

2015年9月18日