1998年
著者:千葉百子
所属:順天堂大学医学部衛生学

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

はじめに

本研究は運動・ストレス・加齢が体内のミネラルバランスに及ぼす影響を明らかにすることと、ミネラル補給源として普遍的でかつ低廉な牛乳の有効性を実験的に観察することである。初年度の昨年は市販の牛乳と粉ミルクに含有される元素の種類と濃度を測定し、比較検討を行った。すなわち(a)牛乳4銘柄、(b)乳児用粉ミルク6銘柄、(c)フォローアップミルク5銘柄を分析試料とし、48元素の濃度を測定した。結果として次のような特徴が把握できた。(1)セレン、リン、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムおよびカリウムは牛乳中濃度が明らかに高値である、(2)銅と鉄は牛乳中の濃度は低値である、(3)牛乳中の亜鉛濃度は乳児用粉ミルクと同程度であり、フォローアップミルクではそれらの1/2以下である、(4)牛乳中の銅はフォローアップミルクと同程度であるが、粉ミルク中濃度と比べると非常に低く、1/5以下である、(5)牛乳中セレン濃度は粉ミルク中の2-3倍高値である、(6)銘柄による元素濃度のバラツキは比較的小さい、(7)カドミウム、コバルト、リチウム、鉛、バナジウムは全て0.01μg/mL以下であり、次に示す元素は全て検出限界以下であった:銀、砒素、バリウム、ベリリウム、ビスマス、セシウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユウロビウム、ガリウム、ガドリニウム、ゲルマニウム、水銀、ポロニウム、インジウム、ランタン、ルテチウム、モリブデン、ネオジム、パラジウム、プラセオジム、白金、アンチモン、サマリウム、テルビウム、テルル、チタン、タリウム、ツリウム、イットリウム、イッテルビウム、ジルコニウム。
中間年である本年度はモデル動物として10-70週齢のマウスを使い、自由運動をさせ、血液、骨及び筋肉中の微量元素濃度、カルシウム代謝関連物質の測定、骨密度及び骨の力学特性の測定を行い、牛乳給与の効果を判定するための実験の基礎データを得た。来年度(最終年度)は昨年度と本年度の結果を組み合わせて、牛乳給与実験に取り組む。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021epa.html 

2015年9月18日