1998年
著者:西沢良記
所属:大阪市立大学医学部第二内科

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要旨

動脈硬化と骨粗鬆症との関連が以前から指摘されているが、これら二つの病態を関係づけている要因については十分理解されていない。今回、カルシウム摂取量の動脈硬化への影響をみるため、カルシウム摂取量と酸化LDLおよび他の危険因子との関連を検討した。
対象は、虚血性心疾患や末梢動脈疾患のない検診受診者271名で、カルシウム摂取量の調査を行った。酸化LDLについては、血漿より分離したLDLの試験管内被酸化性(LDL Lag time)、血漿酸化LDL濃度(oxLDL)、IgGクラスの血清抗酸化LDL自己抗体価(oxLDL Ab)を測定した。また、超音波Bモード法により、頚動脈内膜中膜肥厚度(CA-IMT)を計測し、動脈硬化の指標とした。
カルシウム摂取量はLDL Lag timeやoxLDL Abとは有意な関連を示さなかったが、化粧oxLDL濃度とは弱い負の相関傾向を示した。血漿oxLDL濃度に影響する因子を重回帰分析すると、年齢とLDLコレステロールが正の、カルシウム摂取量が負の有意な関連を示した。また、カルシウム摂取量はHDLコレステロールと有意な正相関を示し、この関係は重回帰分析においても有意であった。CA-IMTに影響する因子を重回帰分析したところ、年齢、血圧、NonHDLコレステロールが正の、HDLコレステロールが負の関連を示したが、カルシウム摂取量の独立した関与は認められなかった。
以上より、カルシウム摂取量の多いものほど血漿oxLDL濃度が低く、HDLコレステロールが高いことが示された。今回の成績から、十分なカルシウム摂取は、単に骨粗鬆症のみではなく、動脈硬化に対しでも好影響を及ぼしうるものと考えられた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021epa.html

2015年9月18日