1995年
著者:上野川修一
所属:東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん
牛乳中には既知の栄養素以外に免疫系・神経系・分泌糸などに作用し、生体を調節し、生命を健全に保つ成分が存在している。したがって、牛乳は食品中最も栄養価の高い食品として位置づけられている。牛乳がなければわれわれ日本人の食生活はあり得ないとまで考えられる。
最近のわれわれの食生活の改善は極めて顕著であり、その結巣多くの疾病は減少しつつある。しかしながら、疾病のなかで増加しているものがある。アレルギーである。アレルギーの罹患率は全人口の30%といわれまた食品を原因とするいわゆる食品アレルギーは乳幼児全人口の14%を占めでいる。
多くの食品のなかでアレルギーの原因となるのは卵が最も多く次に牛乳が位置づけられる。これはおそらく、栄養価が非常に高くそのため多く摂取されているためと考えられる。牛乳のなかでは、αS1-カゼインそしてβ-ラクトグロブリンなど主要なタンパク質が主要原因タンパク質(アレルゲン)である。牛乳アレルギーを予防・治療する方法の一つに牛乳を摂取しない方法があるが、これでは乳幼児のみならず成人においても栄養学釣な問題を生じる。またステロイド剤や抗アレルギー剤による治療も考えられるが、副作用が問題となっている。
われわれは牛乳中の機能物質を探索する研究のなかで牛乳アレルゲンのペプチド、そしてその置換体のなかにアレルギーを抑制する可能性のあるペプチドを見出した。本研究ではその成果について報告する。
まず第1部ではこの研究の基本概念となっている免疫学約背景について、第2部では第1部の考えに基づいて行ったβ-ラクトグロブリン由来のペプチドを利用したアレルギー反応の抑制、告書3部では同様に第1部の考えに基づいて行われたαS1-カゼイン由来ペプチドを利用したアレルギー反応の抑制について述べる。そして第4部ではαS1-カゼイン由来の特定のペプチドを経口的に投与した場合の腸管免疫系への影響について述べる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022lsv.html

2015年9月18日