1995年12月01日
著者:内藤博
所属:共立女子大学家政学部

  • 健康科学
  • その他

緒言

 カルシウム(以下Ca)の吸収に及ぼす各種の食品成分の効果について種々の報告がなされている。その中で、アミノ酸の効果については、リジン(以下Lys)の促進性について広く引用され、そのほかのアミノ酸については付随的に述べられているに過ぎない。
またLysそのものについても、教科書的に引用されてはいるが、その根拠については殆どWassermanら(1956,1957)が報告したラットの一連の実験報告によるものである。
すなわち、若いラットの放射性Caの大腿骨への取り込み量から推定した骨の形成能が、Lysの胃ゾンデ経口投与により高まり、他のアミノ酸ではArgのみが効果的マあり、やや効果が現れたものは、Trp,Ile,Aspであったという。
その後いくつかの報告が散見されるが、決定的な内容のものは見られない。ただしWassermanらの観察では、LysのCa吸収促進性は、対Ca比が14(モル/モル)程度の単独投与の条件のみで発現し、通常の食餌への添加では認められないと述べている。
これは、20種類のアミノ酸中Caの吸収に阻害的な性質のものがあるため、食餌タンパク質全体としては、プラスとマイナスの効果により相殺されていると説明している。Wassermanらの報告以後、文献検索の結果、直接LysとCa吸収の関係をみた信頼できる報告は見当たらない。
一方、近年食餌摂取時における物質の吸収は、その小腸管機内濃度が高く、上皮細胞間隙を通るパラ細胞輸送による可能性が主張されていることから、LysとCa輸送との関連をこの点から検討することにした。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022ll2.html

2015年9月18日