1992年
著者:上野川修一
所属:東京大学農学部農芸化学科

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん
牛乳中に含まれている免疫系に作用する新生理活性物質を評価する場合、これまで牌蔵やリンパ節中のリンパ球が用いられてきた。しかし、牛乳が実際に体内に到達し、初めに接触するのは、腸管のリンパ球である。
この腸管のリンパ球は独特のものであり、上記した牌蔵やリンパ節のそれとは異なっている。しかしながら、このリンパ球は現在、その培養法が確立されていない。本研究においてはこのリンパ球のクローン樹立のための研究を行なった。
まず最初に腸管リンパ球の特徴について述べておきたい。
小腸上皮内リンパ球-Intestinal intraepithelial lymphocytes (IEL)-中のT細胞はその細胞表面にある抗原たんぱく質に大きな特色がある。すなわち、T細胞のうちかなりの部分がCD8+抗原をもち、T細胞抗原受容体はγδ型が多く存在している。これは、末梢血におけるT細胞の分布と大きく異なっている点である。
このIELの機能的な特徴としては、CD3、CD8、γδT細胞のおよそ30%がインターフエロンγ、インターロイキン5を産生し、腸管に特異的な抗体であるIgAの産生に重要な役割を果たしていること、そして、またγδ型T細胞は細胞障害活性をもっていることなどが明らかとなっている。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021uzy.html

2015年9月18日