1989年
著者:上野川修一
所属:東京大学農学部農芸化学科畜産物利用学研究室

  • 健康科学
  • その他

目的

 牛乳の主要蛋白質であるカゼインを消化酵素で分解した際に生成するペプチドの中には様々な生理的機能を持つものが存在することが、近年多くの研究者によって報告されている。我々は牛乳や人乳のカゼイン分解物がマウスの繊維芽細胞の増殖(DNA合成)を促進することを見いだし、カゼインが単なるアミノ酸給源としてではなく、細胞増殖因子の前駆体として乳幼児の身体の発育に寄与している可能性を示唆してきた。また、牛乳カゼイン由来の細胞増殖促進ペプチドはβ-カゼインの177-183番目に相当するフラグメントであることを認めた。このペプチド、β-CN(f177-183)はアンジオテンシン変換酵素の阻害活性を示し、また肝細胞における尿素合成を促進する性質を持つことも報告されていることから、多機能性ペプチドとして関心を集めている。昨年度の報告に示したように、本ペプチドのマウス3T3細胞増殖促進効果はFCS(牛胎児血清)の存在下で楠強されることから、本ペプチドはFCS中の成分と相乗的に作用することが示唆された。本年度はFCS中に存在し得る代表的な僧殖因子としてEGF(上皮増殖因子)及びPDGF(血小板由来細胞増殖因子)を選び、それらとβ-CN(fl77-183)との相乗効果について検討した。またカゼインペプチドが別の繊維芽細胞株であるL細胞や小腸上皮細胞株であるIEC-6細胞に及ぼす影響についても検討した。さらに牛乳ホエー蛋白質の酵素分解物中にも3T3細胞増殖促進活性を持つペプチドの検索を行った。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021tkn.html

2015年9月18日